postmanの徒然日記

長編恋愛小説 〜ふたまわり・第二部〜(四十八)の一と二

(2012/05/15 Tue)

三部構成の、
大長編です。
どうぞ気長に、
読んでください。
実はこれ、
まだ執筆中なんです。
−−−−−

(一)

小夜子の初お目見えに、店内は蜂の巣を突付いたような騒ぎとなった。
ある者は絶叫し、ある者は万歳をし、また中には泣き出す者も居た。

「見えたぞー! 奥さまが見えたぞー!」
「ばんざーい! 社長ー、ばんざーい!」
「あぁぁ、シャチョー! いや、もう!」

奥の事務室からも、どっと出てくる。
そして、皆口々に囃す。
「かわいぃぃ! お人形さんみたいぃぃ!」
「素敵ぃぃ! お姫さまだわぁ!」
「そうよ、そうよ。富士商会のお姫さまよ!」

顔を真っ赤にして、武蔵の背に顔を隠す小夜子。
まさかこれ程に歓待されるとは、思いも寄らぬことだ。
武蔵の妻としての小夜子だ、拍手ぐらいはあるだろうと思ってはいた。
しかし、この歓声。

武蔵の背から降りた小夜子。
ぴったりと背に張り付いて、顔を隠している。
「ほら、みんなに挨拶しろ。
みんな、待ってるぞ。」

武蔵に急かされて、おずおずと背から顔を出した。
「奥さま、お待ちしていました。」
と、花束が贈られる。
顔を真っ赤にしながら、受け取る小夜子。

かつての小夜子なら、至極当然のことと傲慢に受け取った。
いやそのように振舞った。
“弱みを見せたらだめ!”

その思いが、小夜子をして傲慢な態度を取らせていた。
しかし今、小夜子を敵視する者は居ない。
小夜子を見下す者も、勿論居ない。
どころか、心底から小夜子を歓迎している。



(二)

「うっ、うっ、うぅぅ」
むせび泣く小夜子に、
「どうした、小夜子。
見ろ、みんながお前を待ってたんだ。」
と、声をかける武蔵。

「がんばってください、奥さま。」
最古参事務員の徳子が声をかけた。
意外な言葉に、武蔵が驚いた。
五平は、ニヤニヤと笑っている。

昨夜、五平と徳子の間で交わされたやりとり。
武蔵は知る由もない。
「いいか。社長の愛人でいたかったら、よく考えることだ。 」
「どうしてあたしじゃ、ダメなの? 
いつかは奥さんにしてもらえるって、そう信じてきたのに。」

「ふん。社長にそう言って貰えたのか? 」
「いえ、それは。
でも、それを信じて縁談話も断ったし。」
口を尖らせ小声で、口にした。

「おいおい。それを俺に言うのか? 
俺が知らないとでも、思っているのか!」
ギロリと睨みつけられて、思わず目を伏せた。

「去年の春だ、お花見がてらのあれは、一体なんでしょうかね。
えぇ、徳子さんよ。まあ、いい。
どうせ、小夜子さんを見たら、お前さんも納得するさ。」



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長編恋愛小説 〜ふたまわり・第二部〜(四十七)の七と八

(2012/05/13 Sun)
三部構成の、
大長編です。
どうぞ気長に、
読んでください。
実はこれ、
まだ執筆中なんです。
−−−−−

(七)

“靴はな、男の顔だ。
汚している奴は信用できん。”
と、汚れを極端に嫌がる武蔵だ。
その武蔵が、泥だらけにしている。
飛び付きたい衝動に駆られる小夜子だった。

「さぁ、着いたぞ。ちょっと待て。
ここもぬかるんでるな。
うーん、よし。小夜子、おんぶしてやる。」
「えぇ! やめてよ。
こんなことなら、振り袖なんか着るんじゃなかった。」

「なに言ってる、可愛いぞ。
ほら、来い。」
嬉し恥ずかし、の小夜子だった。
中腰でお尻を突き出す武蔵。
何とも微笑ましい光景が見られた。

「いいですか、社長。
これは重大なことですからね。
奥さまとして皆に認めさせる儀式みたいなものですから。」
「分かった、分かった。で、どうすればいい? 」

「なに、簡単なことです。
小夜子奥さまのとびっきりの笑顔を見せればいいんです。
あと、社長のベタ惚れぶりも。
それと、振り袖姿を見せてやって下さい。
それで、完璧です。」




(八)

「それでって、五平。
振り袖だって? 今さらそりゃないぞ。」
「いいんですよ。
可愛いけりゃ、なんでもいいんです。
小夜子奥さまの振り袖姿は、絶品です。
誰が見ても可愛いですって。

とにかく可愛いく見せるのが、ミソなんです。
あの旅館の女将のように押さえ付けるか、
盛り立てようと思わせるか、どちらかなんです。
小夜子さんは家の中でじっとしてる人じゃない。
もっとも、英会話の特技を生かせてもらわなくちゃいけませんが。

幸い道がぬかるんでます、靴を思いっきり汚して下さい。
それと、会社の前で小夜子奥さまを抱っこして下さい。
車から降りる時、ぬかるみですから不自然なことはありません。

照れることないでしょうが。
そいつが、ベタ惚れの証左になるんですから。
大丈夫ですって。」
膝を乗り出して、武蔵に講釈する五平。
有無を言わせぬ力がこもっている。

「だけどなあ。小夜子、嫌がらねぇか? 」
「大丈夫! 」
「はしたない!って、ならねぇか? 」

「大丈夫! 小夜子さんだから、大丈夫ですって。
正直、奥さまじゃありません。
どう贔屓目に見ても、奥さまじゃない。
でも、いいんです。
みんな、妹みたいな目で見ますから。」



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霞だけでは、体重が軽くなりすぎますから。

(2012/05/11 Fri)
同僚が、GWに金沢に出かけたらしいんです。
で、先日のこと
「尿管結石で医者に行きますので、お休みさせて下さい。」とのこと。
翌日、元気に出社されました。
良かった、良かった。

そこで、ひと言。
「いくら美味しいからと言って、石まで食べることはないでしょうに。」
すると、涼しい顔で切り返しが。
「いやいや。霞だけでは、体重が軽くなりすぎますから。」

以前に、仙人のような生活だという話を二人でしていたのですが、覚えておられたようで。
打てば響くの、楽しい御仁です。



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長編恋愛小説 〜ふたまわり・第二部〜(四十七)の七と八

(2012/05/06 Sun)
三部構成の、
大長編です。
どうぞ気長に、
読んでください。
実はこれ、
まだ執筆中なんです。
−−−−−

(七)

“靴はな、男の顔だ。
汚している奴は信用できん。”
と、汚れを極端に嫌がる武蔵だ。

その武蔵が、泥だらけにしている。
飛び付きたい衝動に駆られる小夜子だった。

「さぁ、着いたぞ。ちょっと待て。
ここもぬかるんでるな。
うーん、よし。小夜子、おんぶしてやる。」

「えぇ! やめてよ。
こんなことなら、振り袖なんか着るんじゃなかった。」

「なに言ってる、可愛いぞ。
ほら、来い。」
嬉し恥ずかし、の小夜子だった。

中腰でお尻を突き出す武蔵。
何とも微笑ましい光景が見られた。

「いいですか、社長。
これは重大なことですからね。
奥さまとして皆に認めさせる儀式みたいなものですから。」
「分かった、分かった。で、どうすればいい? 」

「なに、簡単なことです。
小夜子奥さまのとびっきりの笑顔を見せればいいんです。

あと、社長のベタ惚れぶりも。
それと、振り袖姿を見せてやって下さい。

それで、完璧です。」




(八)

「それでって、五平。
振り袖だって? 今さらそりゃないぞ。」

「いいんですよ。
可愛いけりゃ、なんでもいいんです。

小夜子奥さまの振り袖姿は、絶品です。
誰が見ても可愛いですって。

とにかく可愛いく見せるのが、ミソなんです。
あの旅館の女将のように押さえ付けるか、
盛り立てようと思わせるか、どちらかなんです。

小夜子さんは家の中でじっとしてる人じゃない。
もっとも、英会話の特技を生かせてもらわなくちゃいけませんが。

幸い道がぬかるんでます、靴を思いっきり汚して下さい。
それと、会社の前で小夜子奥さまを抱っこして下さい。
車から降りる時、ぬかるみですから不自然なことはありません。

照れることないでしょうが。
そいつが、ベタ惚れの証左になるんですから。

大丈夫ですって。」
膝を乗り出して、武蔵に講釈する五平。
有無を言わせぬ力がこもっている。

「だけどなあ。小夜子、嫌がらねぇか? 」
「大丈夫! 」
「はしたない! って、ならねぇか? 」

「大丈夫! 小夜子さんだから、大丈夫ですって。
正直、奥さまじゃありません。

どう贔屓目に見ても、奥さまじゃない。
でも、いいんです。

みんな、妹みたいな目で見ますから。」



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長編恋愛小説 〜ふたまわり・第二部〜(四十七)の五と六

(2012/05/05 Sat)

三部構成の、
大長編です。
どうぞ気長に、
読んでください。
実はこれ、
まだ執筆中なんです。
−−−−−

(五)

そうなのだ、茂作翁には見せていない。
それどころか、結婚の許しすら得ていない。
武蔵の言い付けにも関わらず、手紙で報告をしてしまった。

体を許してしまった今、渋々ながらも許してくれるだろうと考えていたのだが。
しかし結婚ともなれば、一生のことだ。
烈火の如くに怒る返事が返ってきた。

「そんなふしだらな女に育てた覚えはないぞ!」
と、ある。
「すぐにも戻れ!」 と、きつく書いてある。
小夜子の対応如何では、すぐにも来る勢いだった。

「正三と添うつもりじゃなかったのか! 」
それを言われると辛い。
捨てられたとは、断じて認められない小夜子だ。
有り得べからざることだ。

己が男に捨てられることなど、太陽が西から上りはしても、有り得ないのだ。
しかし未だに何の音信もない。
加藤宅には、くれぐれも頼んである。
盆暮れの届け物は、決して欠かしていない。

もっとも、そんなこととは露知らぬ武蔵こそ、いい面の皮である。
せっせせっせと、贈り続けている。
商売に関しては生き馬の目を抜く武蔵も、小夜子に対してはまるでだった。

小夜子にしてからが、正三に未練があるわけではない。
しかし、訳の分からままの宙ぶらりんが納得できない。
そしてなにより、小夜子の意思で、言葉で終わりにしたいのだ。
でなければ、小夜子のプライドが許さない。




(六)

「明日、昼前に迎えを寄越すから。」
「えぇ! 来てくれないの? 」
拗ねた表情を見せる小夜子。
恨めしげに武蔵を見る小夜子。

「分かった、分かった。
俺が来る、多分大丈夫だろ。 」
「だめ! 多分なんて。
絶対来て! じゃなきゃ、行かない! 」
頬をぷーっと膨らませて、迫る。

「分かった、分かった。
だったら、振り袖着てろ。
お互いの、約束だ。」
「うーん、分かった。」
渋々といった表情を見せる小夜子だが、内心では
“それも悪くないか”
と、思えてきていた。

夜半に降り出した雨だったが、朝にはすっかり上がっていた。
「プップー!」
車のクラクションが鳴り響く。
「はぁい! 」
バタバタと玄関に走ってきた。

「待ってろ、小夜子。 」
玄関の引き戸が引かれ、
「おう。道がぬかれん出るからな、この板の上を歩けよ。」
と、靴を汚している武蔵だ。



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