三部構成の、
大長編です。
どうぞ気長に、
読んでください。
実はこれ、
まだ執筆中なんです。
−−−−−
(一)
源之助はゆったりとした気分で、葉巻をくゆらせている。
一仕事終えた後のように、充足感にどっぷりと浸かっている。
「あなた、橘家さんからお電話です。」
奥方のどこか険のある声が、廊下から聞こえる。
喘息持ちの奥方には、葉巻の煙は厳禁だ。
「みねから、だと?」
自宅への電話など初めてのことだ。
何か良からぬことかと気が急く。
「どうした?」
「申し訳ございません。」
「うん、よろしくない。」
奥方が聞き耳を立てているであろうことを意識しての受け答えだ。
「実は、正三坊ちゃまがお見えになっております。」
「正三が?皆で騒いでいるのか?」
「いいえ!お一人でございます。
何だかお疲れのようで、『酒!』とひと言なんでこざいます。」
「そうか…、相当に堪えたようだな。分かった。
今夜はしこたま飲ませてやってくれ。
そうだ、先夜の芸者を呼んでやってくれんか。
いや、遅くでかまわんさ。遅いほうが良かろう。
で、明日はゆっくり寝かせてやってくれ。
役所は欠勤させるさ。
お前の機転で連絡したとかでも言ってやってくれ。
少し荒れるかもしれんな。
ま、よろしく頼む。」
(二)
受話器を置くと、すぐに奥方が飛んできた。
「正三さん、大丈夫でしょうね。大事な預かりものなのですから。
やはり、お泊めしたほうが宜しかったかしら。」
「いや、これでいい。橘の方がいい。
今夜はしこたま酔って、全てを洗い流せばいい。」
「少し可哀相な気もしますね、正三さん。」
「何を言うか!あんな竹田の分家如きの娘なぞ、話にならん!」
更に言いたげな奥方だったが、源之助の剣幕に押された。
“そうね・・。役所で出世するには、どうしても、ね。
でもどんな娘さんなのかしら、正三さんがこれほどに惚れ込むなんて。”
翌朝、夢を見た。
いや、夢であってほしいと、切に願う正三だ。
久方振りの小夜子は、銀幕のスターかと見紛うほどに、光り輝いていた。
傲然と正三の前に立ち、居すくまる正三を見下ろしている。
「許してください、本意ではありません。
僕の預かり知らぬところの、出来事なのです。
酔っていたのです、前後不覚になっていたのです。」
「そうだ!プロジェクトです。
僕、叔父さんの引き立てで、重要機密プロジェクトに参加しました。
幹部候補生になるべく、道が用意されているんです。」
「来年には東京大学に入ります。
卒業後には、課長職あたりに付く筈です。
次官になるべく、小夜子さんの為に日々奮闘しているんです。」
「小夜子さん、お願いです。
許してください、気の迷いなんです。
そうだ、きっと同僚に仕組まれたのです。
僕には何のことか分からぬ内に、なんです。」
そんな弁解の言葉を並べれば並べるほどに、深みに入ってしまう。
必死の形相で、懇願する正三。
もの言わぬ小夜子に、手すら合わせる。
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